2009/02/02

 レーザー技術総合研究所と東京工業大学、鉄道総合技術研究所、西日本旅客鉄道、鉄道建設・運輸施設整備支援機構は共同で、レーザーをコンクリート表面に照射して、5m離れた位置からコンクリート内部の浮きやはく離を調べられる「レーザーリモートセンシングによるコンクリート内部欠陥探傷装置」を開発した。

 2種類のレーザーをコンクリートの表面に照射する。一つはコンクリートを打撃するためのパルス波。もう一つは、コンクリートの振動を計測するための緑色の連続光だ。

 パルス波はハンマーで軽く打撃する程度の力がある。パルス波を受けたコンクリートが健全な場合、コンクリートの表面は2kHzよりも高い周波数で振動する。逆に、コンクリートの内部に浮きやはく離があると、2kHzよりも低い周波数の振動が目立つようになる。


山陽新幹線の橋で実験した様子。橋の下面のコンクリートにレーザーを照射して、浮きやはく離を調べた (写真:レーザー技術総合研究所)


トラックに積んだ装置から照射したレーザー。いまのところ、装置が大きく振動すると精度良く計測できない。トラックは動かさずに、周囲のコンクリートにレーザーを照射した (写真:レーザー技術総合研究所)

 レーザー技術総合研究所などは、装置とコンクリート表面の相対的な揺れを補正する仕組みを開発。5m離れた位置からレーザーを照射しても、精度良く計測できるようにした。実験では、コンクリートの表面から深さ10cmにある欠陥を把握することができた。レーザーの計測点の間隔を狭くすればするほど、小さな欠陥もわかるようになる。

 コンクリート表面に計測点を縦方向と横方向に並べて設けることで、コンクリートの内部にある欠陥の形を二次元で調べられる。レーザーをコンクリート表面に斜め45度の方向から照射しても計測が可能だ。


2.5cm間隔で計測点を設けて、レーザーを照射した結果。中央の赤色の部分にコンクリートの浮きがある (写真:レーザー技術総合研究所)

 同装置は、1点の計測におよそ1秒かかる。レーザーを照射してコンクリートの表面を振動させなければならないからだ。レーザー技術総合研究所などは今後、計測時間の短縮を目指す。さらに、装置をトラックなどに載せて、トンネルなどを走りながら計測できるようにする。

 コンクリート内部の浮きやはく離を調べる方法は従来、人がハンマーなどでコンクリートの表面をたたき、音で欠陥の有無を判定する打音検査が一般的だった。足場や高所作業車を使って人がコンクリートの表面に近づかなければならず、作業の効率が悪かった。